予感

「予感」ってタイトルにすべき予感がしたのでそうした。

わたしこんなにも文章書けなかったっけって、言葉選ぶの苦手だったっけってとても思う。ほら、この一文がもうまさしく「苦手」という感じだ。苦手っていうのは下手ってことじゃない。下じゃなくて苦しい。サイゼリヤまちがいさがしよりも簡単なことだ。下ならある意味まだ諦めがついていいのかもしれない。でも諦めるしかないことを思うとそもそも選べていないのだと思うと、苦しい方がまだ選べるだけいいのかもしれない。選んでいるから苦しい気もする。なんでもいいのなら適当にその辺に落ちているのを拾って他人から借りパクしてそれっぽくキレイに並べるだけでいい。でも他人のもので個展開きたくないでしょ。説明もできない、思い入れもない、誰が誰に話しているのかわからない。少なくともそこに私はいない。私の前にも誰もいない。でもあなたの前には私がいるらしい。「それ私じゃないよ」って私が言わなきゃ気づかないだろう。でも言えない。言えはするけど、独り言になってしまう。だって私、そこにいないから。嘘を嘘だと見抜けても、私の言葉を誰かの言葉だと見抜ける人はいないだろう。ここに書いてある言葉も私の言葉じゃないのかもしれない。そう何人が疑ってここまで読んできた?

 

そういえば、思い入れって「思い入れ」だと思ってたけど「思いが入ってる」ってことなんだ、とか、そういうことにいちいち気がつくことも減ってしまった。気づけなくなっていることに気づくのも変だけど。

 

ちなみにここまで書いたこと、「予感」と全然関係ない。

 

浴槽の栓を抜くと、洗い場に水が溢れてくる。噴水みたいに。排水溝が詰まっている上、浴槽の排水口と洗い場の排水口がつながっているから流れ出る水が行き場をなくしてこっちにくる。その度にああ、昨日も排水溝詰まってたなって思う。それがもう15回くらい繰り返されてる。私が何もしないでほったらかすものだから、もう15回くらい繰り返してる。私の問題なのにぼーっと眺め続けている。なんだか今日はやけに水が引くのが遅い気がした。遅すぎて、薄いプールが5分間くらい存在している。このプールは冷たいし汚いので私は入りたくないから、椅子の孤島に座って足を壁に預けて入らないように触れないようにする。排水溝の蓋はかなり最初の方から漂流していたので、拳よりも二周りくらい小さなサイズの髪の毛の塊が排水溝に詰まっているのを容易に確認できた。でも私はそれよりも、浴槽にあとどれくらい水が残っているのかが気になる。それが流れきれば一先ずは落着するから。でも足を壁に預けているせいで動きが制限されてしまい、あと少しだけ遠くて覗き込めないのだった。そうこうしているうちに、だんだんと足は疲れて滑り落ちていってしまう。しかも、どうせちょっと冷たいだけじゃんとかかなりどうでもよくなってきて結局負けた。浸かってしまった。今までの抵抗が無駄になる瞬間。汚くて薄いプールに浸かりながら、「なんか生物って生きようとするものだから、自殺する人ってわざわざ死へ向かって突っ走っていくわけでかなり勇気あるなとか感じていたけれど、実際全然そんなことないのかもしれないな」とか考えた。もう死ぬしかないんだろうな。逃げるより死ぬ方が簡単じゃん、とか考えるより先に死んでるんだろうな。生きている世界がすでに地獄なら「死んだあとの地獄の方が楽説」に賭けてみたい、みたいなのあるかもしれない。とか取り留めもないことを考え続けるも、水はまだ引かない。毎日もそんな感じなのだ。つまらないのに。

 

浴槽の水がいつ流れきるのかわからないのなら、さっさと髪の毛の塊を取り除いてしまえばいい。そもそもいつかは取り除かないといけない。今取り除けば16回目を免れられる。なんとなく、なんとなく毎日もそうなるような気がして、今取り除かなきゃいけない気がして、汚ね〜〜とか言いながら取り除いたらあっという間にプールは消えた。こんなに簡単で、あっけないのだなと思った。最後まで浴槽の水の残量は見ていないけれどたぶんそれなりにあって、でもすぐ流れてしまった。取り除いて何か後悔しただろうか。自明だ。後悔するわけがない。だって、いつまでもそこに溜めておく理由がない。愛着もない。なんでもっと早く捨てなかったのだろうとすら思うけれど、まだ間に合ってよかったなとも思う。毎日も、今ならまだ間に合うのだろうか。

 

取り除かれて浴室の端の方に置かれた髪の毛の塊を見て「捨てなきゃな」と思いながらとりあえず浴室を出た。今から経血で汚れたズボンを洗わなければいけない。お風呂の洗剤で落ちるなんてよく聞くけど、一回もちゃんと落ちたことがない。これが気分なら問題ないけど。3日後とかに洗うせいかな、まあ今回もどうせ落ちないだろう、なんて思いながら浴室にズボンを持ち込んで洗剤をつけた。落ちた。いつも間に合っていなかっただけだったらしい。 

 

ズボンを洗い終えて浴室を出るとき、私は髪の毛の塊を捨てることを忘れなかった。

これで、この毎日も捨てられるようなそんな気がする。

 

書き終えて気づく。「予感」って、そういう意味なのかもしれない。